産後がはじまった

こどもがうまれたらそれはもう産後

原一男は現代のドンキホーテなのか

原一男の22年ぶりとなる新作ドキュメンタリー『ニッポン国泉南石綿村~劇場版 命て なんぼなん?~』が上映されるとのことで、子どもを預けて渋谷にあるシネマヴェーラに。映画をスクリーンで見るのは超久しぶり。

www.cinra.net

映画は、国を相手取って戦った泉南アスベスト訴訟の原告団を、8年に渡って追ったもの。『ゆきゆきて、神軍』の奥崎謙三や『極私的エロス』の武田美由紀のような、圧倒的な個性を放つ一人の人間にぐっと迫ってゆく、という方法論ではなく、原告団の数人や弁護団たちといった複数の人物にかわるがわる光をあてつつ、長期に及んだ裁判の経過を追っている。いわば正統派の「社会運動もの」ドキュメンタリーなのだが、登場するのは真っ当というかごくごく普通の生活者の方々で、中盤から、もっと国に対する怒りを爆発させて欲しい、もっと過激な画を撮りたい、と願う原監督のもどかしさが映画の前面に出てくるのが印象的だった。

もっと怒りを!と煽る原に対して「それは厚労省前で焼身自殺をすればいいということなのか」と違和感を表す人や、当時厚労相だった塩崎(イケメン)に謝罪されたらポワーンと満足してしまう女性もいて、逆にいつも野次を飛ばして怒っているおじさん(インテリの人らしい)は建白書を首相に手渡ししようとして「勝手なことしないでください!」とばかりに弁護士に怒られていたし。。

これが現代の社会運動なんだろうなと思うけれども、そんなどでーんと横たわる「現実」に対して原が決して勝てない無謀な戦いを挑んでいるようにも見え、その有様が何より面白いと思ってしまうのは、単に私が原一男ファンだからであろうか。

個人的には本作を見て、「現代における社会運動とは何か」について改めて考えさせられた。いわゆる「杉並区保育園一揆」も、デモを行った上で自治体に異議申し立てをする…という正攻法の社会運動の一種なのに、どーにも大きな運動に育っていないような印象がある。私自身、かつての保活当事者として今後も何からの形で声をあげていくという道もあるはずなのに、実際に保育園に入ってみたらそういうことをやる気が全く無くなった。単純に復職して忙しいということもあるけれど、保活中は子を抱え職を失うかもしれないという労働市場における「弱者」だったのが、保育園に入った瞬間にある程度の収入があるフルタイムワーカーで夫と子がいる「勝者」になってしまうので、声を上げにくいのだろう。実際、金にものを言わせて引越しをし、金でポイントを買った一人なので、「勝ち組が何言ってんだ」と言われたら何も言えねえ…。本映画を見ていても、なんの責任もないのに肺を蝕まれ、咳き込みながら街頭デモを行う原告団の姿や、手弁当で献身的に働く弁護団の姿が何より心に迫ったし、「おかわいそうな弱者」にしか国に文句を言う資格はないのだろうか。。そうだとしたら、社会運動は難しいなと思った(小並感)