産後がはじまった

こどもがうまれたらそれはもう産後

所沢市問題は、激化する「保活」の成れの果て

所沢市の保育園育休退園問題が、いろいろと話題になっている。

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そもそも4月からの制度変更の詳細を3月に発表してるっていうのがおかしいし(最低でも1年は猶予期間を設けるべき)、所沢市長の「子どもはお母さんと一緒にいたいはず」とかいう謎価値観の押しつけはそりゃ炎上するよなーという感じなのだけれど、ネットなどでの反応を見ていると、「待機児童もいるのだから、育休中は自宅で子どもを見るというのはある意味合理的な選択なのでは?」「育休中まで育児を保育園任せにするなんて甘えだ!」というような、母親たちをバッシングするような声がすごく多くて、読んでてつらい。

ただそのように無邪気に「育休中は退園して当然では?」と言ってしまえる人たちは、保育園入園の大変さが分かっていないのでは?という気がしている。市は出来るだけ元の園に戻れるようにするとしているが、確実に復園できる保証はどこにもなく、子の学年差などによっては結局どこにも入れず、退職一直線となることが容易に想像できるからだ。

たぶん母親たちは、育休中に上の子の面倒なんて見たくありませ〜ん!保育園に子どもを通わせ続けるのは当然の権利!と思っているわけではなく、やっと入れた保育園からまともな説明もなく追い出され、子どもを二人抱えて先の見えない保活をまた一からやり直さないといけないことに怒りを覚えているのだ。

つまりこの問題における母親側の反応は、異常に激化・複雑化し、一般には見えにくい形でゲリラ化した「保活」の一つの結果と考えるべきであろう。保育園探しは本当に人を狂わせる。以下、とりとめがないうえ長いので、読み飛ばしても可。

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◆「三歳の壁」はどうする?

特に第一子の再入園が3歳クラスとなる場合、ものすごく大変だと思う。例えば、2015年7月15日に第二子を出産した場合、9月末(2ヶ月後の月末までに退園しないといけないので)には2歳クラスに通う第一子を退園させなければいけない。それで約8ヶ月育休を取って2016年4月に二人同時入園を目指す場合、第一子は3歳クラス、第二子は0歳クラスとなるわけだが、3歳クラスの入園はもともとべらぼうに難しい。0〜2歳までの小規模園に通うたくさんの親たちが3歳から通える園を探しているのに、3歳クラスの新規募集はほんとうに少ないからだ(下のクラスからの持ち上がりでほとんどが埋まってしまう)。この問題はかねてから「三歳の壁」と呼ばれていたのだが*1、運悪く育休明けでここにぶちあたってしまった親は、本当に泣くしかない…。

◆100点プラスの愚よ

そもそも所沢市がとった復園対策は「育休退園者は利用調整指数に100点プラスします」というもので、平たく言えば「フルタイム共働きだと通常60〜70点ぐらいで入園できるところを、育休退園した子には特別にプラス100点あげるから、どこかしらには入れるでしょ?」というものでしかない。一人親世帯でもプラス50点なので宇宙の法則が乱れるレベルの加点ということが分かるが、そんな高ポイントをゲットしていても、退園して出来た枠に待機児童が入ってしまって空きがなければ、元の園には戻れないのだ。市のホームページには「安心して復職ができます」「ちゃんと戻れるよ」ってデカデカと書いてあるけど、大嘘じゃねーか…!

というか所沢市は三歳の壁対策としてなのか、「2歳児クラスまでの認可保育園から系列園を希望する場合プラス100点!」「2歳児までの家庭保育室を卒園した子はプラス100点!」という加点を元々設定しているので、そこに育休退園100点を新たに導入しても、ただでさえ激戦の三歳クラスがさらに激戦になってどこにも入れない人が増えるだけで、あまり意味ないのでは?という気がする。宇宙の法則が乱れに乱れまくって、まともに待機している人(それこそシングルマザーなど)の入園が不可能になってしまっては、本末転倒ではないだろうか。

◆保活は怒りのデス・ロード

保育園の数が絶対的に足りず、気を抜いたら自分が蹴り落とされるMADMAX状態の保活戦争において、母親たちが一度確保した席を必死で守ろうとするのは 当然のこと…!安全地帯の高見から「みんな大変なんだから譲りあいましょう♪」とのんきに言われても、はいそうですねと聞く者はいないだろう…!! 

そういうことを言う人は、突然会社をクビになる呪いがかけられ「もっと緊急性が高いニートにあなたの仕事を一年譲ってあげてください♫」「雇用が不透明なのはお互い様なんだからみんなで助け合いましょう! 元の仕事には戻れないかもしれないけど、どこかしら別の会社に再就職できると思いますよ!」とか言われても納得できるのだろうか? ものすごい心の広い人だなー(棒読み)

◆あべちゃんの「育休3年」に逆行するのでは?

また今回の制度変更によって、一年間フルに育休を取得することも難しくなるのではないか。

たとえば、2015年10月1日に第二子が産まれ、一歳クラスに通う第一子を12月末に退園させた場合。認可保育園が年度途中で空くことはほとんどないので、育休を一年間フルで取得して10月に職場復帰したいという場合、まずは空きのある認可外保育園に預け、認可外待機加点をゲットして翌4月に認可保育園に転園できるようにする…というのがよくあるパターンだったように思う。ただ補助のつかない認可外園は保育料がむちゃくちゃ高く(所沢の相場は知りませんが杉並区では月7〜8万円程度でした)、さらにガチで保育園が不足している地域では認可外でさえ4月のタイミングでしか入れないため、実際に通ってなくてもお金だけ払って席を確保しないといけない。しかも上の子も退園してるから、保育料が二人分ダブルでかかるのだ!

◆むしろ待機児童増えちゃいますよ

所沢市がどの程度激戦なのかの実態はよく分からないが、こういうラディカルな制度変更をするくらいだから、保育園不足がかなり深刻な地域なのだろう。というわけで2016年4月から丸一年間、認可外に二人分の保育料を払い続けると仮定すると、月7万×2人分×12ヶ月=168万という計算になり、そのおぞましさが分かるだろうか…。

以上のような費用を払い続けるのは一般家庭では無理だ。その場合、本来なら一年間育休を取れるお休みを切り上げ、泣く泣く0歳4月入園に間に合わせる人が増えるだろう。それが「子どもはお母さんと一緒にいたいはず」という市長の信念(!)に反する事態であることは正直どうでもいいのだが、本来なら必要のない人までハイコストな0歳児保育に応募して待機児童数が逆に増えたとしたら、それこそ問題であろう。

◆てか市はちゃんとした待機児童数出せよ!

というか所沢市は待機児童待機児童って言うんだったら、ちゃんとした待機児童数はどの程度なのか、すぐに公表するべきではないか。

所沢市が公表している待機児童数は昨年4月時点で32名、今年は20名程度と言われているが、もし本当の待機児童数がこれだけなんだったら、小規模保育園をひとつ作れば済む話であって、約90人*2の母親を退園に追い込む必要性はないだろう。しかたなく高い認可外に入った人や、育休延長を余儀なくされた人などは待機児童数に含まれないので、本当の意味での待機児童数は数百人規模に及ぶように思うが、まずは正確な待機児童数を公表した上で、今後市としてどのような対策を取っていくのかを、「◯年までに保育園を新設して受け入れ数を200名増やすつもりなので、育休中だけ我慢して貰えませんか」みたいな形で真摯に説明すれば、納得する母親も多いと思うのだが…。

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…と、ダラダラ長くなってしまったが、指数の加点や入園枠の部分などは細かすぎて、保活の当事者以外は意味が分からない記事になってしまったのではないかと思う。たぶん報道においても、所沢市の指数システムがどうとか言い出すと問題点がいまいち伝わらない記事になってしまうから、「2歳の子どもを急に退園させるなんてかわいそう!」「いやいや小さい子どもはお母さんと一緒にいたいはず!」みたいな感情論で対立させようとして、そこら一面が焼け野原状態になってしまっているのでは。

そんな不毛な論争してる暇があったら、保育園増やしてくれないだろうか…と祈りにも似た希望をつぶやくのも、自分で子どもを育てる覚悟のない母親の甘えと唾棄されるのであろうか。ていうか今回の件で保育園に子を通わす母親はいわれのないバッシングを受けてボロボロ状態なのに、父親たちはどこで何をしているんだろうか。

少子化と言われる世の中に子どもを複数産み育て、なお仕事も辞めずに社会貢献している母親が賞賛ではなく罵倒しか得られないのだとしたら、この世の中は確実に狂っている。そしてそんな狂った世界で子を育てようとするならば、親たちもまた狂っていかざるを得ないのである。

ていうか、保育園の数が足りて、4月に限らずいつでも復園・復職できる状態なんだったら、いくらでも退園しますよ…まじでさ…。

*1:NHKの「首都圏ネットワーク」でも紹介されてますね http://www.nhk.or.jp/shutoken/net/report/20140520.html 

*2:今年度の育休退園者はこのぐらいと市は公表してるらしいが、わざわざ訴訟に打って出た人が11人もいると考えると、実態はもっと多いような気がしている