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産後がはじまった

こどもがうまれたらそれはもう産後

エミリーオスターの妊娠本をみんな読むべき

 

お医者さんは教えてくれない 妊娠・出産の常識ウソ・ホント

お医者さんは教えてくれない 妊娠・出産の常識ウソ・ホント

 

 TEDカンファレンスにも登壇し「思い込みをぶっ壊す経済学者」との二つ名を持つ女性経済学者が、自分自身の妊娠をきっかけに著した妊娠・出産本なのだが、すごーーーく面白い!! そもそも私がこのブログをはじめたきっかけは、「妊娠中でもほどほどなら酒を飲んでよい」のほどほどとはどれくらいか、はっきりしたエビデンスはどこにあるのか、という怒りにも似た疑問が出発点だったため*1、本書を読んで「ウォ―ター!」と、まさに目が覚める思いだった。

ハーバード大で統計経済学を学び、シカゴ大のビジネススクールで教鞭を取るエミリーが子どもを作ろうと思い立った際、直面したのは「ほどほどならOK」「できればしないほうがよい」などの根拠レスな物言いだった。でもそんなのエミリーは許さない!! 「コーヒーは1日2杯まで」は本当なのか? 「羊水検査は原則35歳以上のみ」ってなんで? …と、経済学者魂むき出しで正しいエビデンスを求めて奔走しまくり、自分自身で論理的な意思決定をするため、世界中の統計データを集めて精査したのだ。

例えばアメリカでは日本と同様に、妊娠中のアルコール摂取は禁忌とされているのだが、エミリーが医者に聞くと「でも週に何杯か飲むぐらいならよいよ」とこっそり言われたりしたらしい。なんじゃそりゃ?? それって医者の個人的見解?

たしかに妊娠中の過度の飲酒は胎児性アルコールスペクトラム障害(FASD)の原因となることが知られているし、妊娠中の軽い飲酒(一日一杯程度)でも子どもの攻撃的行動につながることを示唆する有名な研究も存在する。しかし詳しくデータを検証してみると、その調査では飲酒をする女性の45%(!)が妊娠中にコカインを使用していたことが判明*2。それって飲酒じゃなくてコカインの影響が大きいのでは…?と気付いたエミリーは、もっと統計的に信用出来る複数の調査を探し出し、一日1杯程度の軽度の飲酒ならば、まったく飲酒をしない女性よりも問題行動のある子どものいる割合がむしろ少ないことを突き止めたのだ!!

それをもとにエミリーは「妊娠中期なら、一日1杯以下の飲酒なら全く問題ない」と結論づけ、自身でも週3〜4回ほど、グラス半杯ほどのワインを楽しんでいたらしい。私も妊娠してからは、「お酒なんて飲んで大丈夫?」「腹帯巻かなくていいの?」などといった、無責任に放たれる呪詛に苦しめられて来たが、本書を読んでからは何とも心強い「お守り」をゲットした気分で、恐れず適度に酒を楽しむようになった。何の根拠もない脅しに、むやみに屈する必要はない!ドーン!

…と以上のようなノリで、エミリーはどんどん自分で信頼に足るデータを集めまくり、「月1で決め打ちセックスするなら排卵日当日がオススメ!」「コーヒーは1日4杯までOK」「でもタバコはマジでヤバいから絶対ダメ」「ツナは水銀が多いのにDHA含有量が少ないからやめておく」と、独自の判断を下してゆく。妊婦に日々襲いかかる非論理的な「アレしちゃダメ」「コレ食べちゃダメ」という呪詛を、ばったばったとなぎ倒していく様は、大変壮快で気分がよい。その他にも、出生前診断についてのリスクとメリットなどは最新の知見や数値も盛り込まれていて、大変興味深かった(例えば羊水検査や絨毛検査は200分の1で流産のリスクがあるから、染色体異常の可能性がそれよりも少ない35歳以下の妊婦には推奨しないとされているが、200分の1という数字は1970年頃のむちゃくちゃ古いデータであり、最近の調査では流産リスクはほぼないとのデータもあるらしい。へー!)。

そんなこんなで本書は一貫してデータ至上主義的に進んでいくのだが、エミリーのキャラクターがとてもチャーミングなので、学術的堅苦しさは全くない。生真面目でエネルギッシュでデータ大好きな彼女は、「基礎体温の素敵なチャートが取れたわ☆」と喜んでみたり、本格的な子づくりをはじめる前から「私は妊娠出来るのかしら??」とてんぱりまくってかかりつけ医になだめられたり、何の気無しに「コーヒー飲んで大丈夫なの?」と聞いてきた同僚に「エビデンスガ〜」と長々と説明してウザがられたり、なんかすごくカワイイのだ。経済学であれなんであれ、女が生きた学問を身につけるって大事なのだな、学問は世界と対峙する武器になりうるのだなと、期せずして思い知らされた。同じく経済学者をしている旦那さんとも大学3年生の時に知り合ったらしいし、いい教育を受けるってほんと大事なんだなー。

*1:そのあたりは過去日記のこのあたり参照 激おこ日記 - konagona1050の楽しい妊娠生活

*2:飲酒してない女性グループも18%はコカインを使用してたらしく、それはそれでどうなのって話だが